春雷 「ただいまぁ」 玄関が静まり返っている。 いつもならツヨシが出迎えてくれるはずなのに。 「珍し」 しばらくしても一向に姿を見せないことに不安を感じた。 「どないしたんや・・・」 部屋を見渡してもどこにもいない。 「まさか外に?・・・な訳ないか」 窓から見える空は暗雲が立ち込め、時折稲妻が走る。 「どこにおるん?」 激しく降る雨が不安を増幅させた。 無意識に体が動き出す。 ただ、ツヨシを探すことしか考えられなかった。 部屋中を探し回り最後に寝室の扉を開けた。 ベッドのシーツが少し盛り上がっているのに気付き、微笑む。 「こんなトコにおった」 シーツを捲ると、いつもより縮こまっているツヨシがいた。 雷が鳴るたびにビクッと体が反応する。 その姿が可愛くて強く抱き締めてやる。 「雷怖かったん?」 答えるようにクゥンと鳴いた。 普段の生意気な態度も たまに見せる甘えた姿も 仕事で疲れた心を癒してくれる。 いつのまにか当たり前の存在になっていたことに気付かされた。 そのままベッドに潜り込む。 腕の中の、今は整った呼吸がくすぐったい。 「いい夢見いや」 そして、 ずっとそばにいて。 ------------------- 先日の春雷で思いつきました。 某二人組の曲ではありません。歌詞知らないし。 昔、従弟の犬が雷に驚いて行方不明に。 犬は雷が嫌いみたいですが、今頃どうしてるでしょう? 生きてたらいいのにね。 ウチの猫も雷が嫌いです。押入れの中に引き篭もります。 因みに私も。 体育の時間に卓球台の下に隠れました(笑) |
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